シトリックスでは、総務省や東京都が主導する「テレワーク・デイズ2019」(7月22日(月)~9月6日(金)実施期間)」に参加し、自宅、カフェ、コワーキングスペースなどで自社の製品を使った仕組みを活用したテレワークを実施していました。

テレワークにより、フレキシブルな働き方の制度が浸透する一方、テレワークを実施する場所もこれまでの「自宅」と「会社」の2択から、カフェ・飲食店などの「オープンスペース」や共同で場所を借りて利用する「サテライトオフィス」など従業員の働く場所に多様化が見られるようになってきました。デジタルワークプレイスが進むほど、働く場所の定義が変わって行くことでしょう。シトリックスでは、「ワークプレイス・エクスペリエンス」というコンセプトを提唱しており、従業員のエクスペリエンスを向上させるには、デジタル、リアル、プロセス、文化を総合的にとらえたワークプレイスが重要であるという考えです。

例えば、リアルの環境において、出社して仕事をする従業員のエクスペリエンスも高められるよう、社内のファシリティにも様々な工夫を盛り込んでいます。

一部の従業員には固定席を割り当て、従来型の会議室も用意する一方で、オフィススペースのかなりの部分を、大きく3つのエリアで構成しています。第1のエリアは自分の仕事に没頭できるエリアです。ここでは昇降式で自分の好みの高さが選べるデスクに、2枚のディスプレイが配置されています。また電話や遠隔会議を使用する時に声が漏れないよう、個室も用意しています。集中や音の配慮の上、設計をされたエリアです。

第2は複数のテーブルや椅子が配置された、ディスカッションのためのスペース。そして第3がオープンな多目的スペースです。これらのスペースには、移動可能なパーティションが用意されており、必要に応じて空間を区切ることができます。加えて、マジョリティが「テレワーク」を利用する場合のコミュニケーションの在り方に不安を感じる声も聞こえるようになっており、個人の生産性を保ち、チームとしてコラボレーションを維持する新たなルール作りや文化づくりが必要になってくると考えられます。

これらのスペースで特筆すべきなのは、音に対する配慮を徹底していることです。例えばディスカッションスペースを複数チームが利用している場合、他のチームの声が気になって議論が進まない、といったことが起こりがちです。このようなことを避けるため行っているのが「サウンドマスキング」です。これは、天井裏にスピーカーを設置して特殊な音を出すことで、周囲の音が心理的に「言葉として聞こえない」状況を作り出す仕組みです。

このような音への配慮は、会議室でも実施されています。ここで採用されているのが「スラブトゥスラブ」という手法です。オフィスビルの壁は床から天井までのものが一般的であり、上階のスラブ(構造上の床板)から天井の間(天井裏)と、床からスラブの間(床下)は、空いた状態になっています。そのため他の部屋の音が、天井裏や床下を通って伝わりやすいのです。スラブトゥスラブとは、壁を上下のスラブまで延長するという建築的な手法であり、これによって天井裏や床下を伝わる音を遮断します。

これだけ音に配慮しているのは、人の集中力が音によって大きく左右されるからです。オフィス内でパフォーマンスを最大化するには、ファシリティにも徹底したこだわりが必要なのです。なお音だけではなく、室内の配色にも工夫を凝らしています。従業員が落ち着いて仕事に集中できるよう、ねずみ色や小豆色、抹茶色といった和の色を、積極的に採用しています。

すべては「従業員エクスペリエンス」の向上のために

シトリックスがこのような形でIT環境やファシリティを用意しているのは、「従業員エクスペリエンス」を向上させるために他なりません。働き方改革を確実に推進していくには、働き方に対するビジョンやそれを達成するための制度設計が欠かせません。しかしそれらと同等、あるいはそれ以上に、IT環境やファシリティの整備も重要なのです。